日々のこと、「地球へ…」のことソルジャーブルーのこと。その他ラクガキ。
2008
以前にS様N様、そしてO嬢に話したブルー介護のお話です。
3話分をつなげました。既に全文書いてはあるのですがUPは移動中に(汗)。
以前長き眠りについている間のブルーのことをじっくり考えたことがあって。
身体ってほんの少し動かさないだけで、どんどんと衰えていったり痛んでしまったりする。
奇蹟を信じた、そして未来を諦めなかったであろうシャングリラの日々をおもって通勤中にかきました。
では今夜はアンソロ原稿がんばりますー。
3話分をつなげました。既に全文書いてはあるのですがUPは移動中に(汗)。
以前長き眠りについている間のブルーのことをじっくり考えたことがあって。
身体ってほんの少し動かさないだけで、どんどんと衰えていったり痛んでしまったりする。
奇蹟を信じた、そして未来を諦めなかったであろうシャングリラの日々をおもって通勤中にかきました。
では今夜はアンソロ原稿がんばりますー。
音もなく開いた青の間の入口から、ハーレイは心持ち早足でスロープを上っていく。
時計はないが、約束の時間を過ぎていることは確かだった。人類軍の追手をワープで振り切ったのはまだ小一時間前だというのに、この部屋は何もかもまるで時が止まっていたかのようだ。
外界とはサイオンに関しては完全に閉ざされた空間。部屋を満たす空気は、人の熱をこもらせることはない。
この10年間、青の間から人間が居なくなったことは一度もないというのに。
上り切った先で、ハーレイを認めて立ち上がる人影があった。
「キャプテン!もうブリッジは大丈夫なのですか?」
「待たせてすまない。多忙な身の上はお互い様なのに」
あなたほどではありませんよと、ドクターノルディは微笑んだ。
今回の戦闘では、船体に一発被弾はしたが怪我人はでなかった。だから彼もこうして青の間にやって来れたのだった。
「ではさっそく始めようか」
挨拶もそこそこに、ハーレイはベッド脇の椅子にマントと上衣を手早く脱いで掛けた。下履も続いて脱ぐ。補聴器も外した。左耳の聴力はあるので、至近距離での会話ならば問題なかった。太腿まで被うスパッツ一枚の姿になるまでの間に、ノルディは眠り続けるソルジャーブルーの毛布をそっとめくり、脈拍を確認する。そしてそのまま壊れ物を扱うように慎重に両の手袋を外していった。
「体温は先ほど測りました。相変わらず低い…生命維持ギリギリのラインです」
「そうか。他に何か変化は?」
ブーツを脱がしながらハーレイは尋ねる。
「いえ…よくも悪くも変調は見られません」
現れた真っ白な足先をそっと握りこんだ。末端は特に血の巡りが悪く、その冷たさと筋肉の強ばりにおもわず呻くような声が口をついた。だがすぐに気を取り直すと、柔らかく優しく両手で甲を包み込んで揉んだ。少しずつハーレイの手からブルーの足に熱が移っていき、筋肉の固さが弛んでいく。
ノルディは手の指を一本ずつ丁寧にマッサージしている。二人がブルーの四肢に全て施し終える頃には、先ほどまで人形のように蒼白だったブルーの頬にほんのりと赤みが差していた。
末端神経に対する刺激による生理的な体温上昇だと分かっていても、それに応える力がブルーに残っていることはいつも二人を勇気づけた。
次にブルーのマントとチュニックを脱がせ、アンダースーツ姿になったブルーをハーレイはそっと抱き上げる。軽く華奢な体躯。この10年の間に、更に少しずつ細くなっていった。アルタミラで倒れたブルーを抱き止めた時、あまりの軽さに驚いたが———あの時のブルーの身体はまだ幼い少年のものだった。今は違う。だが軽さは恐ろしいほど近づいて来ていた。
ノルディが自分を見上げる視線に我にかえり、ハーレイはブルーを抱えたままゆっくりとスロープを下りはじめた。隣を歩くノルディの表情は、何かおもい詰めているように堅い。
「何か悩み事でも…?私でよければ力になるが」
ハーレイの問いかけに、ノルディは力なく首を横に振った。
「いえ、大丈夫です。ご心配かけてすみません」
ハーレイはそれ以上無理に問いただそうとはしなかった。ソルジャーブルーのことかもしれないし、今メディカルルームに入院している戦闘セクションの2人の意識回復が難しいということかもしれない。
(続く)
時計はないが、約束の時間を過ぎていることは確かだった。人類軍の追手をワープで振り切ったのはまだ小一時間前だというのに、この部屋は何もかもまるで時が止まっていたかのようだ。
外界とはサイオンに関しては完全に閉ざされた空間。部屋を満たす空気は、人の熱をこもらせることはない。
この10年間、青の間から人間が居なくなったことは一度もないというのに。
上り切った先で、ハーレイを認めて立ち上がる人影があった。
「キャプテン!もうブリッジは大丈夫なのですか?」
「待たせてすまない。多忙な身の上はお互い様なのに」
あなたほどではありませんよと、ドクターノルディは微笑んだ。
今回の戦闘では、船体に一発被弾はしたが怪我人はでなかった。だから彼もこうして青の間にやって来れたのだった。
「ではさっそく始めようか」
挨拶もそこそこに、ハーレイはベッド脇の椅子にマントと上衣を手早く脱いで掛けた。下履も続いて脱ぐ。補聴器も外した。左耳の聴力はあるので、至近距離での会話ならば問題なかった。太腿まで被うスパッツ一枚の姿になるまでの間に、ノルディは眠り続けるソルジャーブルーの毛布をそっとめくり、脈拍を確認する。そしてそのまま壊れ物を扱うように慎重に両の手袋を外していった。
「体温は先ほど測りました。相変わらず低い…生命維持ギリギリのラインです」
「そうか。他に何か変化は?」
ブーツを脱がしながらハーレイは尋ねる。
「いえ…よくも悪くも変調は見られません」
現れた真っ白な足先をそっと握りこんだ。末端は特に血の巡りが悪く、その冷たさと筋肉の強ばりにおもわず呻くような声が口をついた。だがすぐに気を取り直すと、柔らかく優しく両手で甲を包み込んで揉んだ。少しずつハーレイの手からブルーの足に熱が移っていき、筋肉の固さが弛んでいく。
ノルディは手の指を一本ずつ丁寧にマッサージしている。二人がブルーの四肢に全て施し終える頃には、先ほどまで人形のように蒼白だったブルーの頬にほんのりと赤みが差していた。
末端神経に対する刺激による生理的な体温上昇だと分かっていても、それに応える力がブルーに残っていることはいつも二人を勇気づけた。
次にブルーのマントとチュニックを脱がせ、アンダースーツ姿になったブルーをハーレイはそっと抱き上げる。軽く華奢な体躯。この10年の間に、更に少しずつ細くなっていった。アルタミラで倒れたブルーを抱き止めた時、あまりの軽さに驚いたが———あの時のブルーの身体はまだ幼い少年のものだった。今は違う。だが軽さは恐ろしいほど近づいて来ていた。
ノルディが自分を見上げる視線に我にかえり、ハーレイはブルーを抱えたままゆっくりとスロープを下りはじめた。隣を歩くノルディの表情は、何かおもい詰めているように堅い。
「何か悩み事でも…?私でよければ力になるが」
ハーレイの問いかけに、ノルディは力なく首を横に振った。
「いえ、大丈夫です。ご心配かけてすみません」
ハーレイはそれ以上無理に問いただそうとはしなかった。ソルジャーブルーのことかもしれないし、今メディカルルームに入院している戦闘セクションの2人の意識回復が難しいということかもしれない。
(続く)
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